Midjourney V8とV7:変わったプロンプトの解剖学
MidjourneyのV8ファミリーは、あなたとモデルのあいだの契約を書き換えました。V7は解釈者でした。プロンプトを提案として読み、自らの美意識に寄せて装飾していたのです。V8は実行者です。書かれた仕様をはるかに忠実に実行し、ハウススタイルをどれだけ残すかは--rawというダイヤルで決まります。精度が報われ、雰囲気任せが罰せられる契約だと言えるでしょう。その一方で、プロンプト入力欄の下ではパラメーターの顔ぶれも動きました。qualityの値は消え、マルチプロンプトも消え、シードは近似になり、アップスケーラーはネイティブHDに置き換わり、そして黙って旧モデルで走る参照タイプがひとつ残っています。本稿は、私がプロンプト入力欄の脇に置いている移行マップであり、Midjourney自身のバージョンドキュメントと突き合わせて検証したものです。1
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TL;DR
- メンタルモデルが反転しました。 V7は解釈して美しく整えましたが、V8ファミリーははるかに文字どおりに実行し、
--rawがその忠実さのダイヤルになります。「dramatic lighting(ドラマチックな照明)」はV7のプロンプト、「single overhead key light, no fill, hard shadows(フィルなしの単一トップキーライト、ハードシャドウ)」はV8のプロンプトです。 - プロンプトの階層は今も支配的です。 被写体が先、続いて被写体のディテール、コンテキスト、スタイル、技術的指定、パラメーターの順。どちらの世代でも前方のトークンほど重みを持ちます。スタイル語から書き始めるのは昔からアマチュアの印でしたが、V8の文字どおりさがその代償を一段と高くしました。
- V7から削除・変更された点:
--qのquality値(非対応)、::を使ったマルチプロンプト(V8非互換)、バイト単位で同一のシード(現在は「99% identical(99%一致)」)、独立したアップスケール工程(ネイティブ2048pxの--hdに置き換え)、そしてNijiとTurbo(V8の経路ではありません)。1 - 引き続き使えるもの:
--no、--raw、スタイルリファレンス、画像プロンプトと画像ウェイト、ムードボード、chaos、stylize、weird、--exp、パーソナライゼーション。1 - 罠: V8ジョブでの
--oref(Omni Reference)には「(Uses V7)」と注記されています。パラメーター自体は受け付けられますが、ジョブをレンダリングするのはV7です。V8にいるつもりで、V7の絵柄を受け取ることになります。1 - 制作現場の落とし穴: HDレンダリングを編集すると(Pan、Zoom Out、Vary Region)、警告もなくSDへダウンスケールされます。アップスケールはすべての編集を終えた最後に行ってください。1
- パラメーターを1つずつ網羅した解説はMidjourneyガイドにあります。本稿はV7からV8への差分に絞ったものです。
体制転換:解釈者から実行者へ
V8ファミリー(V8.1は2026年6月10日から7月23日までデフォルト、V8.2は7月24日以降デフォルト12)について最も身につける価値があるのは、モデルがあなたの代わりに推測することをやめた、という一点です。V7は「beautiful cinematic portrait(美しくシネマティックなポートレート)」と書けば、照明設計もパレットもムードも自前で補ってくれました。多くは見事な仕上がりで、そして常に主張がありました。V8はその主張をあなたの手に返します。
実務上の帰結は次のとおりです。
ムードボードではなく撮影監督のように指定する。 「single overhead key light with no fill, hard shadows(フィルなしの単一トップキーライト、ハードシャドウ)」は「dramatic lighting」に勝ります。「35mm film photograph, grain, Kodak Portra 400 palette」は「vintage look」に勝ります。固有名詞のアンカーは健在で、むしろ効きは増しました。「Annie Leibovitz portraiture」「Roger Deakins cinematography」といった指定は、精密な仕様をわずか2語に圧縮してくれるからです。
--rawは、ハウステイストをどれだけ残すかのダイヤルです。 Rawをオンにすると、Midjourneyのデフォルトの美的解釈はほぼ完全に後退します。オフのままだと、とりわけV8.2はV8.1の落ち着いたデフォルトより大胆なハウススタイルを乗せてきます。2 V8.1の見え方に合わせて調整したパイプラインなら、V8.2の「more creative, bold, sophisticated, and edgy(より創造的で大胆、洗練され、エッジの効いた)」デフォルトは、再調整するまで劣化として映るはずです。2
階層の重要性は下がるどころか上がりました。 V7で機能していたプロンプトの構造――被写体、被写体のディテール、コンテキスト、スタイルとムード、技術的指定、パラメーターという並び――はそのまま生き残っています。トークンの位置が影響力に対応する点は変わっていないからです。変わったのは、それを破ったときの罰則です。V7はスタイル先行のプロンプトを自らの判断で救ってくれましたが、V8はあなたの乱れた優先順位を忠実にレンダリングします。
V7にあってV8にないもの
互換性チャートは、誰もが読み飛ばし、あとで代償を払うことになるドキュメントの一部です。1 実際に痛いのは次の差分です。
| V7での習慣 | V8での現実 |
|---|---|
--q 2 / --q 4 のquality段階 |
非対応。qualityはV8のダイヤルではない。--q前提のワークフローが重要ならV7を使う |
マルチプロンプト(concept:: weight) |
V8互換として掲載されていない |
| 再利用でき、バイト単位で同一のシード | シードは「(99% identical)」。厳密な再現ではなく近似再現 |
--style raw |
改称。V8のフラグは--raw。持ち越された--style rawは最も多い移行時のつまずき |
| 旧来のアップスケール工程 | 廃止。2048pxの--hdでネイティブに生成する(編集からの復旧用にUpscaleオプションは残る) |
--cref(キャラクターリファレンス) |
引き続き非対応(もともとV7ではなくV6/Nijiの機能) |
| Niji 7、Turboモード | V8ファミリーの経路ではない |
そして、独立した段落に値するのがこれです。--orefと--owはV8ジョブでも受け付けられますが、「(Uses V7)」と注記されており、レンダリングを実行するのはV7です。1 警告は何も出ません。Omni Referenceの出力がほかのV8.2の仕事とどこか違って見えるなら、それはV8.2の仕事ではないのです。
V8が返してくれるもの
この取引は懲罰的ではなく、きちんと見返りがあります。V8ファミリーは標準ジョブをおよそ4〜5倍高速にし、--hdの背後で2048pxのネイティブ出力を用意し(SDの0.8に対して1.3 GPU分)、Draft Modeでは24枚の探索グリッドを標準ジョブの半分のfast時間で回せます(V8.1、そして7月27日のドキュメント改訂によればV8.2でも。FAQを参照してください)。13
スタイルリファレンスも世代交代しました。V8 Alphaの期間にベースラインとなった--sv 7というstyle-versionは、従来の仕組みより約4倍高速かつ約4倍安価で、ムードボードも同じ条件でこれを既定に使います。4 旧コードが取り残されるわけではなく、--sv 4と--sv 6は今もV6世代のコードを解釈します。とはいえ、互換モードに住み続けるより、現行システムでリファレンスを作り直したほうが結果は良くなります。
V8.2の目玉はパーソナライゼーションです。プロファイルは蓄積されたあなたの好みを「much better(はるかによく)」読み取るようになり、新規プロファイルはより大きな画像プールを参照します。そして移行組にとっての朗報が、V7のプロファイルがV8.2でそのまま動くことです。Global V8プロファイルは依然として存在せず、グローバル枠はV7プロファイルのままです。5
GPU分を実際に食う3つの落とし穴
HD編集の往復。 HD画像に対するPan、Zoom Out、Edit/Vary Regionは、結果をSDへ落とします。ドキュメントにもはっきりそう書かれており、ワークフローへの含意は厳密な順序です。まず構図を決めて編集し、HDへのアップスケールは最終工程に置くこと。1 編集の多いパイプラインで早々にアップスケールすると、HD代を二重に払うことになります。
HDのアスペクト上限。 アスペクト比は通常14:1まで使えますが、HDでは4:1までです。1 8:1のシネマティックなバナーは、静かにHDレンダリング不可となります。
新規プロファイルのバージョンの罠。 パーソナライゼーションのプロファイルは現在のデフォルトバージョン設定に対して作成されます。New Profileを押す前に目的のバージョンを設定しておかないと、意図しないモデルに対してプロファイルを育ててしまいます。5
移行チェックリスト
- 定番プロンプトを読み返し、ムードを表す語をすべて仕様に置き換える――照明、レンズ、フィルム、パレット。
- 自分で仕様を書き切ったら、
--rawを足してハウススタイルと衝突させない。V8.2の趣味が歓迎できる場面では外す。 --style rawはすべて--rawに置き換える。この改称が最も多い移行時のつまずきです。- テンプレートから
--qを削除し、quality段階が要るワークフローは明示的にV7へ移す。 ::のマルチプロンプトは、単一の仕様に分割する。--orefを棚卸しし、用途ごとにV7のレンダリングで許容できるかを判断する。受け取るのはV7の絵だからです。- 編集してからアップスケールする順序に組み替え、
--hd(またはアップスケール)を最後に持ってくる。 - 多用している
--srefコードは--sv 7で作り直し、--sv 4/--sv 6は保管用コードのためだけに残す。 - 新しいパーソナライゼーションプロファイルを作る前に、デフォルトバージョンを設定する。
完全ガイドでは、Midjourney自身のドキュメントページ間に存在するDraft Modeの互換性の矛盾を含め、すべてのパラメーターとモードを最新の詳細で扱っています。(より古いスナップショットであるMidjourney V8のプロンプト術は、2026年4月時点のV8.0 Alphaをそのまま記録したものです。移行の判断には、本稿が現行の地図となります。)
よくある質問
Midjourney V7とV8の主な違いは何ですか?
解釈のスタンスです。V7はプロンプトを提案として扱い、強いデフォルトの美意識を上乗せしていました。V8ファミリーはプロンプトを文字どおりに実行するため、照明・媒体・構図をどう言語化するかの精度がはるかに効いてきます。機構面では、V8は約4〜5倍の速度とネイティブ2048pxのHDを加える一方、quality段階、マルチプロンプト、厳密なシード再現、独立したアップスケール工程を落としました。1
V7のスタイルリファレンスとパーソナライゼーションプロファイルはV8で使えますか?
パーソナライゼーションは使えます。V7のプロファイルはV8.2と互換で、Global V7プロファイルはファミリー全体で機能します。5 スタイルリファレンスについては、V6世代の旧コードに--sv 4または--sv 6の互換モードが必要です。V8のベースラインはより速く安価な--sv 7ですから、互換モードに住み続けるより、よく使うコードを作り直すほうが得策でしょう。4
同じプロンプトなのに、V8の画像がV7と違って見えるのはなぜですか?
プロンプトが指定しなかった部分の趣味を、V8が補ってくれなくなったからです。V7は隙間を自前の美意識で埋めていましたが、V8は書かれたものをそのままレンダリングします。ムードを表す語は仕様に置き換え(「dramatic lighting」ではなく「single overhead key light, no fill」)、Midjourneyに残るハウススタイルをどれだけ効かせるかは--rawで制御してください。12
Draft ModeはV8.2で動きますか?
Draft Modeは2026年6月にV8.1へ到達しました。2026年8月の再確認時点では、ドキュメントはV8.2でも動く方向に傾いています。Midjourneyは7月27日にDraft Modeの記事を改訂し、V8.1/V8.2向けの仕様(512x512pxで24枚、プロンプトあたり0.4 GPU分、Web限定)を明記しました。ただし互換性チャートのほうは今も遅れており、統合された列ではDraftのチェックが外れたままです。パイプラインを組む前に、各バージョンでドラフトを1回ずつ試して確認してください。--sref randomのサンプラーも同じ機能に乗っています。13
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Midjourney、バージョンドキュメント ― デフォルトモデルの系譜(V7は2026年6月9日まで、V8.1は6月10日〜7月23日、V8.2は7月24日から)、統合されたV8.1/V8.2の互換性列、quality・マルチプロンプト・Niji・Turboの非対応、シードの「(99% identical)」、
--orefの「(Uses V7)」、HD編集時のダウンスケールに関する注記、そしてHDでの14:1対4:1というアスペクト上限。 ↩↩↩↩↩↩↩↩↩↩↩↩↩↩ -
Midjourney、バージョン8.2 ― 2026年7月24日のデフォルトリリース。「an update focused on aesthetics, image quality, and Personalization(美学、画質、パーソナライゼーションに焦点を当てたアップデート)」、「more creative, bold, sophisticated, and edgy」、低品質な外れ値の減少。 ↩↩↩↩
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Midjourney、V8.1向けDraft Mode ― 2026年6月16日、V8.1のSDジョブの半分のfast時間で24枚のドラフトグリッド。Draft ModeのV8.2での扱いはDraft & Conversational Modes(2026年7月27日改訂)にあり、V8.1/V8.2向けの仕様(24枚、512x512px、0.4 GPU分、Web限定)が明記された一方、互換性チャートでは統合されたV8列のDraftが未チェックのままです。 ↩↩
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Midjourney、V8 Alpha向けRelax Mode(2026年3月) ―
--sv 7というstyle-versionのベースライン。従来の仕組みより約4倍高速かつ約4倍安価で、--hd、--p、--stylize、--expに対応し、ムードボードも既定でこれを使う。--sv 4と--sv 6はレガシーコード向けに維持。 ↩↩ -
Midjourney、パーソナライゼーションのドキュメント ― V8.2とV7プロファイルの互換性、Global V8プロファイルの不在、新規V8.2プロファイルのより大きな画像プール、そしてプロファイルが現在のデフォルトバージョン設定に対して作成される点。 ↩↩↩